こいち祭も過ぎ去り秋の風も感じとれる心地好いある日、駅近くの裏路地をさんぽしていると
=たかふじ 洗張丸洗 萬染物=と書いてある看板が目に留まりました。
聞き慣れぬ洗張の響きに思わず誘われて・・・
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格子の隙間からのぞく看板
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「こんにちは。洗張とは、どの様な仕事なのでしょうか・・・?」
「ここは着物の洗濯屋だよ。」
中から粋な声と共に、オーナーの長谷川洋治さんが顔を出して下さいました。
具体的に普通の洗濯と何が違うのかを尋ねてみると、
「一番大きく違う点は、着物を一度ばらして一反の状態に戻し、それから水洗いするってとこかな」
「へぇ~!ばらして洗濯するなんて凄いですね!」
驚く私にばらけた状態の生地を見せて下さり、着物についても説明して下さいました。
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ばらされ一反に戻った生地
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着物は反物を直線的に裁断し作られており、簡単にばらして再び縫う事が出来ます。
この利点を利用して、襟など汚れ易いところはそこだけを取り替えたり、体型が変わっても仕立て直しで調整出来たり、前後左右を入れ替える事により生地の傷みを分散し永く使える様にもなっているそうです。
また、収納もスーツの様に吊るすと場所をとりますが、便利に小さく畳んでしまえます。
昔の人は物を大切に永く使える様にいろいろ工夫していたんですね。
この様な着物の合理的で機能的な点を長谷川さんは、
「着物って合理的って言うより貧乏だよね。貧乏人の文化だね」
と笑いながら話して下さいました。
では洗う作業も特別な仕事ってあるのでしょうか?
「今は出来なくなったけど、昔は川に流して洗ってたんだ。川に流すのは何処にも触れず触らず揺らいでくれるから一番イイんだよ。」
着物は絹で出来ているので水との相性がとても良く、詰ってしまった絹糸が水の中で緩み、本来の張りと光沢を取り戻します。
自然の物を自然の力で元に戻すという事なのですね。
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涼しげな絽(ろ)の着物
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