イナセくんと行く、新橋さんぽ

新橋さんぽ八歩目

洗張 たかふじ

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「いくら丈夫な絹や木綿でも、濡らして揉んだら傷んじゃう。
同じ強度の物同士じゃヤスリを掛け合ってるのと同じ事じゃん」
洗濯機で洗うのは楽だけど傷みも早い分、手間暇掛かっても反物に戻し水洗いするのが着物には一番良い事なんですね。

その他の大きな特色として仕上げのアイロン掛けも違うとの事です。

「洋服は上からブッ潰す様にして圧し掛けます。
けど、着物は引き上げる様に浮かせて掛けるものなんだよ。」
と独特な表現で説明をして下さいました。

洋服の場合縫い目がしっかりしており、見える様にアイロンを掛けても問題ありません。
しかし、着物は縫い目が隠れて見えない様に生地を折り被せてアイロンを掛けるそうです。
その為、普通よりも小振りなアイロンで仕上げ、技術も全く違うとの事です。
着物はフワッと仕上げる物であり、ペチャンコにしてはいけない物なのです。

 

専用の小振りなアイロン

 

「それを知らないお客さんが多いもんだから、ペチャンコにしてこないお前んとこは下手くそだって
言われるんだよね~。馬っ鹿野郎って思うけどさ(笑)」

それをお客さんには言いませんよ・・・ね?
「はい、分りました~って言ってペチャンコに仕上げちゃうだけだよ(笑)」


実際にアイロンを浮かせる技を拝見させて頂いてもイイですか?

「構わないけど、見ても分かんないって(笑)
職人の仕事って全て見て理解出来るもんじゃないよ。
スポーツだって上手い奴は何気なくやってるじゃん。
自分でハンカチにアイロン掛けしてみたら分かるけど、真四角にするのってよれちゃって大変じゃん?
こればっかりは、長年の経験と勘がないと理解出来ないかもね。」

 

独特の道具や技術が用いられるアイロン掛け
片桐さんが実際にして下さいました

 

そんな着物も最近は洗う事までを考えず作られている物も出てきているそうです。
先日もOLの方が成人式で購入した着物を持って来られましたが、金箔をゴム糊でくっ付けてあったり、刺繍も施されており、そのままでは洗えないと説明したそうです。

「例えばセーターなんかで皮が付いてる物はそのまま水で洗えないじゃん。
だから剥がして洗うんだけど、刺繍は剥がせないでしょ?
これって使い捨てだろ?って思う物も結構あるよ。」

知らないとはいえ、そういった着物を買ってしまい、平気で洗濯してしまっている気がします。

こいち祭で着た浴衣も洗って貰えますよね?
「浴衣はクリーニングに出すと5~600円程度なんだけど、ウチだと5000円は取るから高いって文句を言われるよ(笑)」
ですが、洗い方が全く違う訳ですし・・・
「違いを分ってくれればイイけどさ。仕上げがペチャンコで糊がパリパリに利いてるのが喜ばれる世の中じゃね・・・」

 

この仕事場で仕上げが行われます

 

[ さんぽ公開日:2009/08/31 ]


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