しんばし通

Shinbashi Expert しんばし通

[第二幕] 新橋の過去・現在・未来

第9回 外堀通り


文化庁登録有形文化財の堀商店

 外堀通りと赤レンガ通りの交差点に、文化庁登録された有形文化財「堀商店」の建物があり ます。地元の人達は昔からある古い使い勝手の悪いレンガのビルというイメージが強いけれど、 文化人や有識者の皆さんには古くから残る素晴らしい歴史的遺産だと映るらしい。

 そう言われてみれば黄昏時に窓の明かりに映える建物全体を見ると「これは赤レンガ通りに 残された文化の象徴」だと改めて感じ入りました。しかし何故一階の入り口があんなに高いと ころにあるのだろう?入りづらいし使い勝手が悪い。

 近くに寄ってよく見ると、土台がしっかりしているこの古い建物の前の道路、昔は皇居の外 堀だった。そして埋め立て後は軟弱なこの土地の地下水をやたら吸い取ってはビルを建てる建 設ラッシュが始まり、堅固なビルの前の通りは「堀商店」の前で1m近く、昭和時代のビルで も数センチから数十センチ道路から陥没しているのが分かった、いや建物ではなく道路が陥没 しているのである。

 ビルと歩道の間をコンクリで埋めてもすぐにひび割れ、塗り直したり、鉄板でカバーしたり するなど応急処置が外堀通りから仲通り、烏森通りに向かって続く。ところが地面に直接建て られている低層の木造建築などは道路ごと沈んでいるせいか店内との段差は少なく、建物自体 が歪んで道路に対応している。

 岩盤に直接建物の土台を乗せると道路との段差が広がるし、土の上に建てると道路の陥没に 合わせて建物自体が歪む。原因は周囲の建設ラッシュによる地下水の汲み上げ、お台場では何 千メートルも掘って温泉と称して毎日大量の地下水を汲み上げているそうだ。

 この先何十年後、私たちの次の世代はどうなっていくのだろう。3、40年前、スギやヒノキが 儲かるからといって日本国中の山林に針葉樹を増やした結果、ここに来て花粉症やちょっとし た大雨でも土砂災害を引き起こす環境を作ってしまった。

 都心にやたら超高層ビルを乱立させたり、温泉まで掘って地下水を汲み上げ続けたりしてい ると街全体が陥没してしまうのかも。何せスマトラではCGを使った映画の中のワン・シーンだ と思っていた「大津波が街中に押し寄せる惨状」が実写として報道されたのだから。

 都心の地下に大空洞が出来、そこにガスが溜まりかろうじてバランスを保っている状態に誰 かがボウリングを掘ってガスを抜いてしまい一気に圧力バランスが崩れ大陥没が発生、おまけ にガス爆発まで誘発、とか直下型地震が引き金になって都会の真ん中が大陥没、なんていうパ ニック映画のシナリオが現実化しそうなくらい今の都会はストレスをこじ開ける再開発が進ん でいます。

 こんな時は気持ちを取り直して、心地良い音楽を聴きながら、美味しいお酒と美味しい料理 を召し上がると気分が良くなりますね、さあ今日も一杯行くか。

堀商店全景(新橋ニ交差点より)
外堀通り(西新橋陸橋よりJR新橋駅ガードを望む

TOKYO-Doing-Senior-O

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