しんばし通

Shinbashi Expert しんばし通

[第一幕] 新橋の過去・現在・未来

第6回 ビートルズ、ベスト10の5曲を占める。そして「日本列島改造論」「東京オリンピック」


 2003年11月、デフレ不況の中、小泉内閣に活を入れる解散総選挙が行われた。道路公団民営化が進めばあの「東京オリンピック」を冠に首都高、東名高速と進められてきた田中内閣の「日本列島 改造論」は冠動脈造りとしての使命を終える。税金を食い過ぎてコレステロールと中性脂肪が増えてしまった人達にはお金も体もスリムになってもらい、改めてあの頃と今を検証してみましょう。

 スポーツの世界では「東洋の魔女」と言われたバレーボール・チームが回転レシーブなどのテクニックを駆使してパワーを誇る外国人を相手に金メダルをゲット、今のワールドカップ・チームはベテランと素直な若い選手が一戦ごとに進化して行き、バレーボール王国復活の芽が出てきました。気が付けばサッカーや野球も世界レベルに近づいています。

 音楽の世界では、イギリスの港町リヴァプール出身のおかしな男達が世界中の音楽の流れを変えてしまいました。メロディ、ハーモニー、リズムの3原則が揃っていて、当時アメリカで受け入れられていたリズム&ブルース、ロカビリー、ポップスの持つ心地良さに英国人のひねりが入った彼らのロックンロールは、奇抜なビジュアルもアピールし世界中の若者を虜にしました。ビッグマーケット・アメリカは勿論、日本での人気も凄く、彼らの映画が封切られるとスクリーンに向かって黄色い声で絶叫し失神する者も出る始末。「Please Please Me」「I Want To Hold Your Hand」「She Loves You」 「Twist And Shout」「Love Me Do」など次々と発売される彼らのシングルがベスト10の1位から5位を独占し、イギリス、アメリカに次いで日本でもビートルズ旋風が吹き荒れると遂にあのハッピ姿で羽田飛行場のタラップを降りてきたのです。そんな怪物集団は'70年を前にして幻のアルバム「Let It Be」を最後に解散してしまいました。

 '70年と言えば、アメリカではベトナム戦争の後遺症が始まり、日本では70年安保の真っ盛り、音楽シーンではマービン・ゲイが問題作「What's Going On」を発表、30年以上経った今年11月「Let It Be…Naked」が発売され、当時ジョンとポールの進む道が異なったこと、1970年を境にアメリカは東海岸の中産階級中心から西海岸のヒッピーなどラブ&ピースを唱えるロング・ヘアーの若者に移り、ウエスト・コーストが文化の中心になっていった理由が分かってきます。

 2001年9月11日のテロを境に超大国アメリカの弱肉強食の「グローバル・スタンダード」が少しずつ壊れかけている今日、もう一度1970以降を振り返ってみてはいかがでしょうか。新橋のお父さん達はあの時代を背負ってきた企業戦士であり、渋谷のおかしな若者達は"愛と思いやり"に欠けた家庭や学校教育の犠牲者達であること。今、新橋はこだわりを持った老舗がどんどん無くなり、安さと見せかけのかっこ良さでお客を引こうとするお店がやたら増えては飽きられて消えていっている現実。遂この前まで「ハンバーガー」といって日本国中にハンバーガー・ショップが出来たと思ったら、今度はラーメン戦争。いかに安いか、旨いラーメンを提供するかで熾烈な戦いが繰り広げられている。熱しやすく冷めやすい日本人は今、節度も常識も失ってしまったみたい。いや最近は熱くなることも無くすぐに切れてしまうらしい。

 「3割4割当たり前、この分は無料」などと言われるとその言葉の裏も見ずに行動を起こし、「限定1点ものの高級ブランド、今しか手に入りません」などと言われると欲しくて欲しくて我慢できなくなる。たくさんあるといらなくなり、どこにも無くなると何軒も探し回る。「あと2、3年景気は良くならない」と言う人に「俺も頑張るからお前もしっかりやれ」という人は少なくなり、「私に任せれば無料にします」「それならばあんたに任せよう」という人は増えていく。そんな大人相手に小遣い稼ぎをする少女達、お金が無くなれば万引きは当たり前、でも自分が親になったら子供にはさせたくないとうそぶく。

 あの70年以降、ジョンがなんで才女であるヨーコとカメラの前でベッド・インして「LOVE&PIACE」を訴えなければならなかったのか、「Imagine On The Peaple」が分かる人、「The Long And Winding Road」に感じ入る人は多いはずなのに行動は逆だったりする最近の人達。「仏作って魂入れず」とならないように、時代というフィルターを通して自分の心と行動を見直してみましょう。

 1970年ビートルズ解散、アメリカ西海岸中心にボブ・ディラン等60年代からのフォーク・シンガーやジョン・レノン等ロック・シンガーも加わってベトナム戦争に対する抗議運動が盛んになり、やがて70年代、80年代は黄金のウエストコースト・ライフが訪れる。日本では岡林信康や吉田拓郎等が出てきて日米安保条約と共に新しいシンガー・ソング・ライターという世界が確立、やがて大滝詠一、ユーミン、山下達郎、竹内まりやへと続いて行く。ところが90年代に入りONとOFFとの2進法によるデジタル革命が普及して来ると人々の心は続かなくなってしまう。すぐにOFF(RESET)して次を探すようになる。これがいわゆる「失われた10年」の原因だと思うのは私だけだろうか?

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